展示だけではなく、プロジェクト
手島領とタグボートがいま進めているのは、単なる個展でもグループ展でもない。
それは、両者がともに仕掛けようとしている「プロジェクト」である。
ここで言う“プロジェクト”とは、作品を発表する場ではなく、「アートが社会とどう関わるか」を問い直す実験の場だ。
日本のアートは長く、展示会という枠の中で完結してきた。
作家が作品を発表し、観客がそれを見る。それで終わる。
だが手島とタグボートが目指すのは、そこからもう一歩踏み出すことだ。
アートが、社会の空気を動かすカルチャームーブメントになること。
今回の「ART渋谷派」は、その第一章である。
展示というより、新しいコンセプトの立ち上げ宣言に近い。
渋谷という街の象徴性を利用しながら、「日本のアートがどこへ向かうのか」を可視化するためのプロジェクトなのだ。
「渋谷派」は“スタイル”ではなく“思想”である
“渋谷系”という言葉は、かつて音楽やファッションを中心に広がった。
そこには「軽やかさ」「都会的」「洗練」といったイメージがあった。
だが手島とタグボートが掲げる「渋谷派」は、そうした表層的なスタイルの話ではない。
“派”という言葉には、思想や信念の匂いがある。
「ART渋谷派」はまさに、“渋谷という街から生まれる新しいアートの思想”を意味している。
そこには、デジタル時代を生きる作家たちのリアルな問題意識がある。
SNS、AI、コピー文化、キャラクター化、そして個人の表現の価値。
それらが入り混じる混沌の中で、アーティストはいかに「自分の言葉」を持つのか。
タグボートはその問いに対し、作家とともに“新しい時代のアート”を立ち上げようとしている。
それはマーケットのためのイベントではなく、時代を定義するためのムーブメントだ。
「渋谷派」は、アートがもう一度「何を描くのか」「誰のために描くのか」を問うための旗である。
渋谷という街を“実験場”にする
なぜ渋谷なのか。
それは、渋谷がもともと“文化の交差点”であり、“混沌を受け入れる街”だからだ。
ファッション、音楽、サブカルチャー。
どの時代も、渋谷は「新しい価値観」がぶつかり合い、そこから新しい文化が生まれてきた。
いま、その舞台にアートを持ち込むことは、単なる地名の選択ではない。
それは“渋谷という現象”そのものをアートの概念に取り込む試みである。
「ART渋谷派」は、手島領、カネコタカナオ、中島友太という3人のアーティストを起点に、アートを通して“街と時代の関係”を再構築しようとしている。
この3人はいずれも漫画やアニメ、デジタルカルチャーに影響を受けながら、
それを単なる表層として扱わず、現代社会の構造そのものを作品に落とし込んでいる。
つまり「渋谷派」は、“サブカルチャーを超えたアート”であり、“時代の現象をどう美術に昇華させるか”という実験でもある。
展示を通じて問いを提示し、そこに人が集まり、共感が生まれ、その連鎖が新しいムーブメントをつくる。
渋谷を舞台にしたこのプロジェクトは、その最初の実証である。
日本のアートの方向性を変える試み
日本の現代アートは、長く「海外に学ぶ」ことを前提としてきた。
欧米の制度や市場を模倣しながら、そこに追いつこうとする構造である。
だが、もはやそれでは世界に対して発信力を持てない。
日本から発信する新しいアートの形は、日本の文化土壌から出発しなければならない。
それは、漫画、アニメ、ゲーム、デザイン、ファッションといった、この国がすでに世界に誇れる文化資源を再構築することだ。
つまり「渋谷派」は、アートとサブカルの融合ではなく、“それらを同じ地平で再定義する”試みなのである。
タグボートはこれまで、若手作家の育成や販売支援を通じて多くのアーティストのキャリアを支えてきた。
しかし今回の「ART渋谷派」は、それを一歩進め、アーティストとギャラリーが対等なパートナーとして、「新しい時代のアートの構造」そのものをデザインするプロジェクトである。
手島領はアーティストの立場からこの動きを体現している。
10月24日、渋谷で始まる“新しい旗揚げ”
10月24日の夜、「ART渋谷派」が正式に始動する。
それはパーティーというより、“カルチャームーブメントのキックオフ”である。
手島領が提示するのは、「アートが社会とどう接続できるのか」という問い。
タグボートはその舞台を整え、同時代を生きるアーティストたちと「新しい日本のアートの方向性」を実験的に形にしていく。
渋谷という街から、時代の空気を変えるムーブメントが始まる。
それが「ART渋谷派」であり、これから注目すべきアートの現場となる。
24日の夜、その立ち上がりを体感してほしい。
開催時間:2025年10月24日(金) ~ 11月06日(木)
会場:SHIBUYA XXI 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町12−7 渋谷エメラルドビル 1F
※初日の10月24日(金)は17:00からオープンとなります。
※オープニングパーティー:10月24日(金)18:00 ~ 21:00
※クロージングパーティー:11月 6 日(木)18:00 ~ 21:00
※パーティーの入場料金:1000円( ONE ドリンク付き)
※パーティーへのご参加を希望される方は、こちらからお申し込みください。
手島領「BABYBOY-NEO(n) BIRTH-」
2025年10月9日(木) ~ 10月28日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
手島領個展「BABYBOY-NEO(n) BIRTH-」の展覧会情報はこちら